自己紹介

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2021年1月10日日曜日

57週目:1月11日~1月17日のリーディングマラソン予定

前週、56週目:辻村深月「島はぼくらと」、辻村深月「光待つ場所へ」、辻村深月「本日は大安なり」の 計1,283ページ、56週目までの累計は63,698ページです。

 辻村深月「島はぼくらと」は5章に分かれていました。私は1章が一番面白かったと思いました。舞台は瀬戸内海の小さな島、冴島です。この島は島を活性化させるためによそからの移住「Iターン」を積極的に受け入れていました。主人公は朱里、衣花、新、源樹の四人の高校2年生です。朱里たちは本土の高校へフェリーで通っています。ある日、4人はフェリーの中で作家の霧崎ハイジに出会います。霜崎ハイジは冴島に存在するという『幻の脚本』を探すためにやってきました。初めは警戒していた四人ですが、幻の脚本に興味を持ち、探すのを協力することにします。しかし、島の人たちは怪しみ、不穏な空気が流れてしまいます。そこで源樹は偽の脚本を作り、幻の脚本と偽って渡し、島から出て行ってもらうという提案をします。源樹は演劇部所属の新に脚本を書くように頼み小学校の倉庫で見つけたと嘘をついて霧崎ハイジに渡します。すると霧崎ハイジは興奮してそれを持ち帰り帰っていきました。3か月後、霧崎ハイジは4人の渡した偽物の脚本を自分のものとして応募しコンクールで最優秀賞を受賞します。この偽の脚本を書いた新は自分が評価されたことに大喜びします。霜崎ハイジのマイペースさや、島の不穏な空気をなくすために偽物を作ろうとした大胆な源樹の考えにどうなるのかとドキドキしました。最後、新の書いた偽物が最優秀賞に選ばれてしまったところも面白かったです。霜崎ハイジが盗作紛いなことをしているところも霜崎ハイジの性格を表していてよかったです。他にもIターンでこの島にやってきた母子家庭の子の悩みや、朱里の母親が経営している会社のこと、行方が分からなくなっていたもう一人の同級生のことなどほかの章にはもっと内容の深いお話がありましたが私はこの章のオチが心に残っていたので選びました。最後の方には「スロウハイツ」の赤羽環もでてくるので「スロウハイツの神様」も読みたいと思います。

 辻村深月「光待つ場所へ」は短編集でした。「冷たい光の通学路1、2」「しわせのこみち」「アスファルト」「チハラトーコの物語」「樹氷の町」の5つのお話が入っていました。この本は私の好きなスピンオフ作品でした。他の作品ではわき役だった子たちがもう一つの物語では主人公になり同じ出来事を違う目線からみているためいろいろな立場から話を理解できるので好きです。私は「アスファルト」が一番心に残りました。主人公は大学をもうすぐ卒業する藤本昭彦です。物語の舞台はドイツのベルリンです。このベルリンへの旅行は本来なら彼女と二人で来るはずでした。この物語は彼女と付き合っていた時のことや友人関係のことなどをベルリンという地で思い出している様子が描かれています。自分が良かれと思ったことがそうでないなど一人が心地よいと感じてしまう藤本昭彦はベルリンの街で人と人が触れ合うことによって生じる心地よさを感じ、自分の世界に戻ることを決意します。この物語の主人公は大学生で舞台もドイツですが、藤本昭彦のの心情はどの人も経験したことがあると思いました。私も悩みがあったり一人になりたいなと思ったときは、少し普段と違うものに触れてみて新しい世界を発見してみようと思いました。

 辻村深月「本日は大安なり」では4つの結婚式に関する物語が入っていました。私が一番面白いと思った物語は相馬家・加賀山家の結婚式です。まず主な登場人物は新郎の相馬英一、新婦の加賀山妃美佳、新婦の双子の姉の鞠香です。妃美佳と鞠香は一卵性双生児なのでよく顔や姿が似ています。逆にお互いを意識しているため、相手の大事にするものや人を欲しがったり些細なことで優越感を感じるところもありました。新郎の相馬映一はそんな妃美佳のややこしいところに惚れて結婚をします。しかし、結婚前に一度だけ鞠香と妃美佳を間違えたことがあり妃美佳はそんな英一に少し不満を持っていました。そこで妃美佳は鞠香とともにある計画を考えます。それは、結婚式当日2人が入れ替わるということです。妃美佳はもし映一が最後まで見抜けなかったら別れるつもりでした。一方、鞠香は鞠香で考えがありました。妃美佳と鞠香を英一が間違えたというのは鞠香が妃美佳にいったデマで本当は英一は一目で気づいていました。これにより鞠香のプライドは傷つけられたため、この結婚を許せば映一以上の男性を見つけなければならないと密かに対抗心を燃やしていました。だから入れ替わって映一を騙すことで英一が妃美佳と鞠香の違いに一目で気が付いたあの日のことは間違いだと証明し優越感に浸ろうとしていました。しかし、結婚式の途中で火災を知らせる警報が鳴ってしまいます。すると映一は参列席にいた妃美佳の手を取ります。その後、鞠香が映一に声を掛けると、『勘弁してよ』と英一は言いました。英一は今日だけは新婦の妃美佳の好きにさせようと入れ替わっていることに気が付いていながらもそのままにしていたのです。つまり映一は本当に妃美佳のややこしい部分に気が付いていて、彼女たち以上にややこしい男性なのです。また鞠香は映一と妃美香の二人に負けを認め、もっとややこしい相手を見つけなければならないと意気込みます。私はこの物語を読み終えた後、すごくややこしい設定だと思いました。でも、一人一人の個性が際立っていて、とても面白いと思いました。また、妃美香のややこしさを超える鞠香よりもややこしい英一と、その栄一以上の男を探そうと頑張る鞠香の姿に笑ってしまいました。他の物語も同じようにとても楽しく読めました。内容に辻村深月さんの他の作品に登場する人物が出てくることがあったので、もっとたくさん辻村さんの本を読みたいです。

57週目:1月11日~1月17日は次の本(計1,042ページ)でリーディングマラソンの予定です。
・辻村深月「クローバーナイト」(光文社文庫) P429
・辻村深月「きのうの影踏み」(角川文庫)P256
・井上ひさし、平田オリザ「話し言葉の日本語」(新潮文庫) P357