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2020年8月30日日曜日

38週目:8月31日~9月6日のリーディングマラソン予定

前週、37週:吉岡斉「新版 原子力の社会史 - その日本的展開」、日隅一雄、木野龍逸「検証 福島原発事故・記者会見 - 東電・政府は何を隠したのか」、小出裕章「隠された原子力・核の真実 - 原子力の専門家が原発に反対するわけ」、新藤宗幸「原子力規制委員会 - 独立・中立という幻想」、福岡伸一「生命と食」の計1,048ページ、37週目までの累計は41,883ページです。

 吉岡斉「新版 原子力の社会史 - その日本的展開」は読むのが大変でした。私は、日本がどのような経緯で原子力を国のエネルギー源の一つとして取り入れてきたのかについて興味を持ったため、この本を選びました。日本で原爆研究が進められたのは1939年頃でした。戦時研究から進めていましたが戦争などがありしばらく中断します。戦後、1954 年頃から研究が徐々に復活していき試行錯誤を繰り返します。そして出来上がった原子力発電所は、1994年頃までには安定してきました。しかし、1995年頃から事故や事件が続発してきます。その頃から日本は様々な問題を解決するために政治的にも経済的にも低迷してきます。そんな中の2011年、福島原発事故が起きてしまいます。この本を読んで学んだことは2011年以前からたくさんの事故や事件が起きていたということです。なぜ、同じ過ちを繰り返さないようにしっかりと対策をしてこなかったのかとても不思議に思いました。これからも繰り返し読み直したいと思う一冊でした。

 日隅一雄、木野龍逸「検証 福島原発事故・記者会見 - 東電・政府は何を隠したのか」は、原発事故についての日本は国としてどのような対策をとってきたのか知りたかったため選びました。作業員の被ばく、汚染水など様々問題について議論されました。これは私も以前からしていましたが、責任者は「想定外だった」と言い続けたそうです。しかし、関連書にも述べられていましたが、以前からたくさん事故が起きていて地震の専門家なども事故の可能性について再三警告をしていたそうです。「想定外」とは予想ができなかったことを表す表現だと思います。しかし、専門家の方々は、前から想定をして警告していたのであればそれは想定外ではないと思いました。想定されていたにもかかわらず対策をしっかりやっていなかった責任者の罪だと思いました。

 小出裕章「隠される原子力・核の真実 - 原子力の専門家が原発に反対するわけ」は、原子力の持ている力について書かれていました。第一章の『被爆の影響と恐ろしさ』を読んで私はとても怖くなりました。1999年に茨城県東海村で事故が起きました。核分裂の連鎖反応が突然始まり作業に当たっていた3名の方が被ばくしました。放射線の被ばく量は吸収したエネルギー量で決まり『グレイ』という単位を使います。4グレイの被ばくを受けると半数の人が死に8グレイ以上被ばくするとほぼ100%亡くなると言われています。事故で被ばくした3名の方はそれぞれ18グレイ、10グレイ、3グレイでした。18,10グレイをうけた2名の方は大きな病院で骨髄移植あ皮膚移植など様々な治療を受けましたが、皮膚の再生能力が徐々に奪われていったそうです。毎日10リットルを超える輸血や輸液をしましたが、亡くなってしまいました。8グレイで絶望的なのに18グレイも受けてしまったら・・・と考えると恐ろしいです。改めて、人間がこんなにも危険なものを扱っていることを学びました。

 新藤宗幸「原子力規制委員会 - 独立・中立という幻想」は、2011年3月11日14時46分、マグニチュード9.0の巨大地震が東日本地域を襲い、それによって引き起こされた大津波による福島原発重大事故の後に生まれた原子力規制委員会とは一体どんな組織なのか、その歴史や成り立ちが書かれた本です。1955年の原子力三法の制定から3.11までの原子力行政がどのように変わってきたのか、原子力規制委員会の組織はどのように作られているのか、「独立性」や「中立性」はどのように考えるべきなのか、委員会の専門家による知識と結論で本当に私たちの暮らしの安全性を審査できるのか、与えられた「使命」を果たせる仕組みになっているのかなどが議論されています。
驚いたのは、原発事故が起こった時の政権は今とは違い旧民主党で、「自主避難者」への対応が「勝手に逃げた」ようなものであったり、せっかく準備していた放射線物質の飛散状況をモニターするSPEEDIの情報が十分に活用されなかったり、当時の枝野官房長官が、確かな科学的裏付けもないまま「直ちに人体に影響はない」と無責任に繰り返して言っていたり、その後の安倍政権は原発事故の深刻さや「3.11」はまるで存在しなかったかのように避難指示区域の指定をつぎつぎに解除して高い放射線量のまま住民に安心して暮らせると言ったり、そして世界に対しても、汚染水など原発事故の処理は「アンダーコントロール」と実際とはぜんぜん異なることを言ったりと、一体何がどうなっているのか、ということでした。それを後押ししているのが原子力規制委員会でもあるようなので、これからもっともっと調べていきたいです。

 
 福岡伸一「生命と食」は、「生物と無生物のあいだ」の著者の福岡さんが、あの本に書ききれなかった「生きることと食べることの本質的な意味」について書かれています。私たちは、何も食べないとお腹が空きます。生きるためには食べないといけません。なぜ、食べる?生きるため?では生きるとは一体どんな状態?という具合に食べることの意味を考えるには、生きることの意味を探る必要がある、というわけです。「自己複製」「動的平衡」「分子と分子、細胞と細胞の相補性」「エントロピー増大の法則」の話から、危ういバランスをとりながら進んでいるES細胞(万能細胞)のような先端科学の話まで小さな小冊子に大きな話がたくさん詰まっています。「生命から部分は取り出せない」「経済効率を求めた末の狂牛病という人災」「スーパーで並べられている食品を食べるまでのプロセスが見えなくなったことで食の安全が失われた」と言ったキーワードが頭の中をかけめぐっています。鴨長明の「ゆく河のながれは、絶えずして、しかももとの水にあらず」のように生命は、絶え間なく分解と合成を繰り返すダイナミズムの中にある、という言葉が心に響きました。食物は他の生物の身体の一部であり、その食べ物をとおして私たちは生き、環境と直接つながり、交換しあっている、だから、私たちの健康を考えるとは、環境のことを考えることなのだということがストンと頭に入ってきました。

38週目:8月31日~9月6日は次の本(計1,210ページ)でリーディングマラソンの予定です。原発に関する本は難しくて何度か読み直さないと一度読んだだけでは頭に入ってこないです。
・雨宮処凛「14歳からの原発問題」(河出書房出版)P237
・神保哲夫、宮台真司、他「地震と原発 今からの危機」(扶桑社)P254
・ASIOS、アンドリュー・ウォールナー「検証 大震災の予言・陰謀論 “震災文化人たち”の情報は正しいか」(文芸社)P256
・小出裕章「原発のウソ」(扶桑社新書)P182 *3回目の再読
・高木仁三郎「原子力神話からの解放-日本を滅ぼす9つの呪縛」(光文社)P281 *2回目の再読